ようこそ医療ジャーナリスト・医学博士、森田豊の公式ブログへ。

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1963年東京都生まれ。88年秋田大学医学部卒業。95年東京大学大学院医学系研究科卒業。96年東京大学医学部附属病院助手を務め、97年ハーバード大学医学部専任講師。2000年埼玉県立がんセンター医長。04年板橋中央総合病院部長。現在は、現役医師、医療ジャーナリストとして、テレビ、雑誌等のメディアで活動中。さまざまな病気の概説や、医療に関する種々の問題に取り組む。

2009年5月27日水曜日

私設秘書室誕生

本日から、私設秘書室がOPENになりました。平日、祝祭日を問わず、朝9時から夜9時までの、お電話での対応となります。

03-5459-4767 (秘書室直通)

それ以外の時間は、メールで対応いたします。

2009年5月24日日曜日

公式HPに動画導入予定

近日中に、これまでの、医療ジャーナリストとしての活動の一部が様々な形で動画となり、公式HPからアクセスできる予定となりました。

2009年5月22日金曜日

西川のりお氏との対談(動画)

新型インフルエンザに対する国の一連の対策などに関する論評を、「西川のりおの言語道断」(BS11、2009年5月20日)で、約40分間の対談となりました。

2009年5月19日火曜日

エビデンスに基づいた対策を

医療においては、Evidence-based medicine (EBM)といって、科学的根拠に基づいて診療方法を選択決定することが重要です。すなわち、今回の新型インフルエンザの対策に対しても、ある対策をとった場合と、とらなかった場合で、有意な差をもって、感染防御に役立つかどうかという科学的根拠に基づき対策方針がとられるべきです。今回の日本の水際対策のように、国をあげてがんばって、一人も侵入しないように努力する(厚生労働大臣の口癖のようです)という、エビデンスのない努力は、残念ながら、方向性が間違っているようで、経費や時間の無駄になります。そして人権侵害にまで発展するという意見まで出ています。たとえば、現在、マスクが売り切れになっている国内の事情。本当にマスクがどこまで重要なのでしょうか?WHOからの論文にエビデンスガ書かれてあります。新型インフルエンザを発症した人がマスクをつけること、発症した人の1m以内に近づく場合に、マスクを適切に使用すること、これらは効果(エビデンス))はあるようですが、いわゆる、街中を歩いている人が、マスクをつけていることにはエビデンスはないようです。アメリカから成田に着いたアメリカ人も、機内で1時間も待たされたあげく、マスクが全員に配布され、びっくりしたようで、「このマスクが税金で買われていることに、日本人は怒らないのか?」と、感想を言ったようです。その他、国内でエビデンスがないとしてもやられていることとしては、患者の出ていない学校の閉鎖、集会の自粛や中止、機内検閲、患者と接触した可能性のある人の隔離、渡航自粛などがあげられるでしょう。一生懸命にやろうとする国の気持ちはわかりますが、まさしく科学的ではく、政治家のエビデンスに基づいた医療対策ではないでしょうか?水際対策が感染拡大を防ぐことは、ほとんどないか、まったくないわけです(SARSでも同様)。200人近い感染者を出した日本でも、水際で食い止めた人はたった4人だったわけですね。

(参考のサイト)
●マスクに関するエビデンスhttp://www.who.int/csr/resources/publications/swineflu/masks_community/en/index.html
●渡航自粛、水際対策を推奨しないとするエビデンスhttp://www.who.int/csr/disease/swineflu/frequently_asked_questions/travel/en/index.html
●木村盛世オフィシャルWEBサイト
http://www.kimuramoriyo.com/

2009年5月18日月曜日

新型インフルエンザ、国こそ冷静に

新型インフルエンザ大騒動。
国、厚生労働省、地方自治体は、大きな間違いをしてませんか?
結論からすると、これは、最初から、通常の季節性インフルエンザと同様に扱えばよかったということになりますね。
日本の大騒動に対して、同じように考えている国内外医師や、厚生省検疫官現役医師、WHO職員、欧米専門家も多かったようです。

致死率も、従来の季節性インフルエンザと、それほど変わるものではありません(これまでの報告では、通常の季節性インフルエンザで、0.1%、新型で0.4%ですが、この値は、メキシコでの死亡の数が多いので、それを考慮すると、新型はそれほど高い死亡率ではありません)。また、治療薬もある日本がどうして、患者の出ていない学校や様々な集会まで閉鎖にしなければならないのか、患者でない人を隔離しなければならないのか、WHOや欧米の専門家達も、まったくエビデンスのないこと、としています。人権侵害にも発展しかねないという人もいます。それだったら、従来の季節性インフルエンザの患者さんにも同じような対応をすべきではとも考えてしまいます。

現在は、地方自治体の発熱外来で対応していますが、今後は絶対にキャパシティがなくなりますし、現在の病院事情からすれば、患者隔離など不可能になります。すぐに、通常のインフルエンザと同様に、病院および自宅対応にしてよいと思いますがね。すなわち、新型患者が出ても、タミフル、リレンザを出して、自宅で安静。重傷者のみ入院にする。すでに、さきほどから、神戸ではそのような対応になったようで、それは懸命だと思いますが、まだまだ各地はパニックしています。

国のリーダーが、最初から、きちんと説明すべきだったのです。政治家ではなく、できれば専門家にゆだねて、過剰でない、適切な初期対応。とくに、国民のパニックやメディアのパニックを生じさせないような気配りが第一だったように思えてなりません。国は、国民に冷静にと言っていながら、結局、派手な水際対策、発熱外来と騒ぎを拡大させ、一番冷静ではなかったようです。

厚生労働大臣の会見では、水際対策でなんとしても全力をあげて国内侵入を防ぐと言っていましたが、これは政治家の発言で、大変がんばっているとは思いましたが、医学的には不可能なことは、最初から明瞭でした。症状がでる前の時期、すなわち、ウィルスを持って潜伏期に入国した人が山ほどいるからです。機内検閲や、サーモグラフィーは、症状もなく潜伏期で入国した人々のことを考えれば、意味がないことと考えられます。一台、300万円もするサーモグラフィーを数百台もの費用は、もったいない気もしてなりません。100人以上もの感染者がでて、その中で、水際での検出は4人です。防御服を着て、細菌テロに立ち向かうような機内検閲は、どの他の国から滑稽ともとられたようですし(BBC放送も報じていました)、その効果はなかったわけです。最初から、機内検閲はWHOは意味がないといっていました。

新型インフルエンザは、最初から特別あつかいするものではなく、通常のインフルエンザと同様にあつかうべきだったのだと思います。

株価や、経済界、教育界、その他に影響がでるまでの、大騒ぎとなった責任は、国の初期対応と過剰な反応、冷静さを失った国の対応にあったと思います。

2009年5月17日日曜日

新型インフルエンザについて思う

ブログ作成、一日目です。

新型インフルエンザについて、医療ジャーナリストとして思うことを書きました。
(まずは、インフルエンザの一般論、そして、現在、厚生労働省や地方自治体のやられている対策に対しての論評です。) 

この内容は、5月18日月曜日、21:00、BS11,西川のりおの言語道断にて、スタジオゲスト生出演にて対談となります。

●まずは、インフルエンザと一般の風邪との違い
(1)風邪の原因には、さまざまなウィルスが関与しているといわれています。その中でもインフルエンザウィルスによって生じる風邪は、流行性感冒ともいわれ、発熱、関節筋肉痛、倦怠感などの症状が強く、場合によっては死亡することもあります。
(2)2002年に、通常の風邪なのか、インフルエンザによる流行性感冒なのかを約15分で診断できるキットが世にでまわり、また、2001年からは、タミフル、リレンザといった、インフルエンザに対する薬も使用されるようになりました。

●新型インフルエンザとは
(1)これまでのインフルエンザには、A型ソ連型、A型香港型、B型、C型などが報告されてきました。
(2)新型インフルエンザは、豚、ヒト、鳥のインフルエンザウィルスの遺伝子が、豚の体内で混合、進化してできたまったく新しいもの。ただ、症状は、従来のインフルエンザと症状はほぼ同じで、タミフル、リレンザという薬も効果があります。弱毒であり、我々、医師の間では、新型も、従来の季節性インフルエンザとほぼ同じと考えています。
(3)WHOの5月13日の報告では、従来の季節性インフルエンザによる致死率は0.1%だが、現時点での新型インフルエンザの致死率は、0.4%と、報告されています。ただこれはまだ流動的です。
(4)また、特徴的なのは、10代、20代の人に感染者が多いということです。もしかしたら、似たようなウィルスの抵抗力を持っている大人が多いのではないかとも推察されています。

●従来のインフルエンザ、新型インフルエンザの予防法、予防接種の見通しは
いずれの予防法も同一です。
(1) 栄養と休息を十分にとって免疫力、抵抗力を高めること。
(2) つづいて、咳をしている人の近くにずっといない。早めにうがい、手洗い、歯磨きをする。
(3) 国内では、マスクが爆発的に売れていて、それが有用であるということで、病院でもほとんどの医師がマスクをして普通の患者さんの治療にあたっていますが、どうやら、これには賛否両論があるようです。欧米では、症状が出ている人がマスクをするのは他人にうつさないようにするために有用だが、症状のない人がつけても、予防効果にはエビデンス(施行することの根拠)がないと言われています。欧米では、マスクをつけている人は「犯罪者か重症者」という認識があり、日本人のマスク騒ぎには、欧米人は、「マスク姿の異様な集団」と報道しています。ただ、どこまで、医学的な予防効果があるのかはわかりませんが、マスクをしていることで、インフルエンザ予防を意識しているという意識作りにはつながっているようには思います。
(4) 加湿器などを使用し、湿度を50%以上に保つ。(乾燥したところでは、ウィルスが空気中を舞いやすい)。
(5) 予防接種をうける。従来の季節性インフルエンザでは、70から90%の方に効果があったようです。新型インフルエンザについても、作成が始まっていますが、どこまでの量を作成できるか限界があるようです。

●タミフル、リレンザ、どんな薬か
いずれもインフルエンザの発症48時間以内に、使用すれば症状は軽快し、かなりの効果があるといわれています。一時期、従来のインフルエンザのうち、最も多いAソ連型には、効かないのではと報道されたこともありましたが、実際の医療の現場では、インフルエンザの種類を問わず、いずれも効果があるようです。新型インフルエンザに対しても効果があります。

●厚生労働省の水際対策に対して
(1)今回、厚生労働省は、徹底した水際対策をやってきましたが、ただ、これだけの労力をかけるわりには、効果は少ないであろうという医師の意見も多い。ある、現役の厚生労働省検疫官の医師も、WHOが推奨していない機内検疫を中止すべきだと言っているようです。医療には、エビデンスといって、科学的論拠という意味ですが、何かをする場合、それをした方が、しないよりも、統計的に意義があるということに基づく対策、治療をすべきだという大原則があります。今行われている水際対策については、現実としてどこまでエビデンスガあるのか、疑問を唱えている医者が多いようです。
(2)たとえば症状のある帰国者を抽出し検査できても、潜伏期にあるひと(すなわち、ウィルスに感染しているがまだ症状が出ていない人、通常はその期間は、1週間から10日ぐらいあります)は、国内に確実に入っています。追跡調査をするといっても、事実上不可能だと思います。当初、一人も感染者を出さないということは、鎖国でもしなければ無理だったのではとの指摘もあります。
(3)ただ、今回の水際対策、とても精力的で、感染者を一人でも国内に出さないという意気込みを感じている人も多いですし、国をあげて新しいウィルスから守ろうという努力に、異論を唱えることは異端者のようですが、WHOからの情報では、検疫に、疾病の広がりを減らす機能があるとは、考えていない。2003年のSARSの流行時でも検疫が有効ではなかったという報告もあります。
(4)イギリスのBBCなどが報じたニュースでは、日本と同じく島国であるイギリスのヒースロー空港と成田空港を比較し、機内検閲などおこなっている日本のありかたが異様に映ったようです。

●各都道府件の発熱外来の対応は
(1)発熱外来を、各地方自治体が作成されることは、とても意義があると思います。これからは、水際対策にお金をかけるよりも、国内の感染者に対する治療する施設の整備の方が重要になってくるかと思います。
(2)ただ、この対応もとても格差があります。中には、発熱の患者さんと、医師は、隔離されたスペースで、電話でやりとりして、感染しているかどうかのキットの使い方を説明し、白黒ついてから、対応するなど、とても大がかりのことをしていることもあります。
(3)そこまでのことを、冬の季節性インフルエンザも流行し、患者数が激増する状況の中で、実行できていくのか、キャパシティにも疑問を感じます。40名の感染者がでた今日、新型インフルエンザの患者のみを特別扱いしていくことは、あまり得策ではなく、今後は、従来の季節性インフルエンザと同様、通常の医療機関での対応となる可能性が高いと思います。治療法もありますし、致死率も高いものではありません。ですから特別扱いすることではなく、厳戒体制の緩和(橋下知事も提言)をせざるを得ないのではと考えます。

●新型インフルエンザの疑いのある患者さんの診療拒否、真相は
(1)病院の中には、地方自治体の指示にしたがって、まずは、発熱外来へ連絡をと、言ったことを診療拒否ととられた例もあるようですが、地方自治体の発熱外来から、新型インフルエンザの可能性はないから診療してくれとの指示に対して拒否する病院もあったようです。
(2)現在、充実した隔離病棟を持たない病院がほとんどですので、もし、ここまで騒がれている新型インフルエンザ患者が自分の病院に来院し、完璧な隔離や処置ができなく、院内感染などが生じた場合には、その病院が批判されることを恐れる気持ちも理解できます。まさしく委縮医療、怖いことには手をださないという医療崩壊の表れでしょうね。医療側、医師側も、過剰すぎる反応をして、冷静さを失いつつあることが危惧されます。

●今後どうなる
爆発的な感染拡大は、季節的に考えて、すぐに起こる可能性は少ないように思いますが、問題は冬ですね。
冬は、温度が下がり、湿度も低く、インフルエンザウィルスが繁殖するときです。このころに、新型インフルエンザと、従来の季節性インフルエンザを区別して、新型インフルエンザの患者だけを重症、特別扱いして、隔離させる余裕は、今の医療の現場でないように思います。両者とも、通常のインフルエンザ感染として、診療をしていく方向性にあると思います。

●今回の水際対策で隔離された人たちは、仕事もできず、どんな心境なのでしょう?
新型インフルエンザと診断され、隔離、治療されている人は、ご本人も納得されているのでしょうが、しかし、その人と近くにいた、同じ飛行機だったというだけで、一週間とか10日間、隔離された多数の人々は、仕事にも影響し、経済上の問題、人権問題に発展する懸念もあります。現在は、これだけの騒ぎだし、国の政策だから仕方ないと、妥協されているのでしょう。ただし、将来的に、この水際対策がWHOや欧米が言うように、効果がないということがわかれば、大きな問題につながるようにも思います。

●今回の厚労省の発表は、太平洋戦争の『大本営発表』と同じと批判している現場の医師もいると聞きましたが、
(1)全く未知のウィルスで、一たび感染すれば、ほとんどが死亡するとか、そのようなものであれば、ここまで大騒ぎもわかります。しかし、今回の新型インフルエンザは弱毒性であり、なおかつ、従来の季節性インフルエンザの治療薬であるタミフル、リレンザという薬も有効との報告があるので、従来の季節性インフルエンザとほぼ同様の対策でよいのでは、とも思っている医師が多いようです。国は、冷静に冷静にと国民に呼びかけていますが、実は、国自体が冷静さを失っているのではという指摘も多く聞かれます。WHOの報告では、従来のインフルエンザに感染した際の死亡率は、0.1%で、新型は0.4%とのことだが、これは、まだ十分な統計上のデータではないとのことです。なぜなら、新型での死亡者は、メキシコにほとんどがおり、先進諸国の死亡数は、たった数人のみなのです。
(2)今回、関西地方で、渡航歴のない人にも新型インフルエンザが発生して、国のコメントは、「徹底的に感染経路を早く突き止め」と会見していますが、これは、医療に携わる者としては、不可能としか言いようがありませんね。国内感染の方が、だれと接触したのか、それを全部洗いだすことなんかできるわけがありません。
(3)これは、地方自治体ですが、現在の状況で、患者でない人を隔離、学校閉鎖、集会の禁止をすることは、無効なだけではなく、経済活動にも大きな影響を与えるでしょう。いまからそのような状況では、流行が予想される冬には、学校に行けなくなる、仕事ができなくなるそんな事態を危惧します。
(4)これだけの水際対策をしても、渡航歴のない人の感染例の方が多いということは、WHOや欧米諸国が唱えているように、水際対策の効果はなかったのではないかと判断せざるを得ません。

●これから国民が一番、何を気をつけなければならないか?
まず、新型インフルエンザにせよ、従来の季節性インフルエンザにせよ、感染が疑われた場合には、無理して仕事や学校に行かない。これが重要だと思います。風邪ぐらいで仕事を休むなという、風習というか、日本人の努力的な性格が悪さをしてしまうことを危惧します。発熱外来、医療機関へ相談を、これに尽きると思います。
また、会社や学校も、感染の危険のある人を、休ませる環境づくりも必要だと思います。