ようこそ医療ジャーナリスト・医学博士、森田豊の公式ブログへ。

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1963年東京都生まれ。88年秋田大学医学部卒業。95年東京大学大学院医学系研究科卒業。96年東京大学医学部附属病院助手を務め、97年ハーバード大学医学部専任講師。2000年埼玉県立がんセンター医長。04年板橋中央総合病院部長。現在は、現役医師、医療ジャーナリストとして、テレビ、雑誌等のメディアで活動中。さまざまな病気の概説や、医療に関する種々の問題に取り組む。

2010年3月31日水曜日

2010年4月の診療報酬改正!治療費負担はどう変わる?


以下の内容は、bayfm 『POWER BAY MORNING』、デリナビ(2010年3月31日)にて出演、お話した内容です。
2010年4月1日から、病院や診療所で治療を受けたときの医療の費用が変わります。患者が負担する医療費などの基準となる診療報酬が全体で0.19%、引き上げられます。10年ぶりとなるこの引き上げですが、入院や通院をした際、どのくらい影響をうけるのでしょうか?
●今回の改定の具体的な内容は?
内容を見てみると、救急・産科・小児科・外科など、リスクが高く、医師不足といわれている科の再建をめざす、すなわち、医療崩壊を防ぐためのプラス改定ということなんですが、もっとも大幅な変化は、手術の費用でしょう。すべての手術ではないのですが、手術のうちリスクの高いもの、人手を要するもの(全体の手術の約半数)については、3割~5割も医療費が増額されます。たとえば、帝王切開の費用は150000円→19340円、大腸がんなどの直腸切除270000円→405000円、脳動脈瘤クリッピング72000円→103710円と、増額されます(患者負担は、この3割です)。ただし、患者さんにとって、手術というのは何度も受けるものではないので、高くなったという印象を受ける人は少ないかもしれません。
●基本的には上がるものばかりなんでしょうか?
そうとも言えません。たとえば、再診料は、診療所では下がります。病院と診療所で690円と、統一の費用になります。これまで診療所は710円、病院は600円でした(実際に支払うのはこのうち3割)。初診料は、これまでどおり、病院も診療所も2700円のままです。また、注目される点は、医師に処方してもらう薬の価格は、平均で5.75%下がることです。全部の薬ではないのですが、かなり多くの薬の価格が下がるので、いままで継続的に処方されていた薬が、若干、安価になったと感じる人もいるかと思います。また、一部の検査費用も下がります。
●その他に4月から病院にかかった時に変わることには、どのようなことがありますか?
原則として、パソコンを導入している病院では、領収書に治療明細が記載されます。すなわち、詳しい検査の内容、薬の正式名称、診療報酬の点数が明記されます。これは、医療情報の透明化をはかり、医療側の不正請求を防ぐためです。患者さんにとっては、どんな検査をされたのか一目瞭然で、不必要な検査が少なくなるのではとも言われています。デメリットとしては、家族の意向で、がんなどの病名告知をしていない患者さんに対しては、この明細書により病名が明らかになってしまうことが危惧されます。
●今回の改正の問題点は?
改正の大きな目標は、リスクが高く、医師不足といわれている診療科の再建、医師不足の解消なんですが、手術費用を増加させても総合病院、大学病院で勤務する勤務医にとっては、医師個人所得の増加につながらず、そういう診療科の医療崩壊を食い止める有効手段とは言い難いのが現状です。つらくて厳しい診療科、個人給与の増額を望めない診療科には、現状では希望者が入ってこないのです。そこで、医師の間では、手術に従事した医師に対してドクターフィーなるものを収入の一部として支払ってはという意見も出ています。これには、過半数の医師が賛成しています。
●今後、どのような取り組みが必要となってくるのでしょうか?    
医療崩壊の防止、また、救急・産科・小児科・外科など、リスクが高く、医師不足といわれている科の再建には、診療報酬というお金で解決しようとするだけではなく、診療科ごとの医師数の偏在化、そして、地域ごとの医師数の偏在化を是正するようなシステム、制度作りを、国をあげて行うことが肝要だと思います。医学部入学時あるいは卒業時に、外科系、内科系医師の定員を決めるとか、それぞれの出身大学の地域に一定期間、残って勤務するなどのシステム構築が今、医療に求められていることだと思います。医師数を1,5倍にするという民主党のマニフェストもある意味理解はできますが、いま、最も重要で、即時の打開策になりうるのは、この『偏在化の是正』だと思います。

2010年3月3日水曜日

最新医学常識に関する新書発売


2010年3月10日、角川SSC新書、『ねぎを首に巻くと風邪が治るか?知らないと損をする最新医学常識、森田豊著』が、発売されます。
最新医学常識を可能な限りたくさん盛り込んだ著書です。テレビ番組や雑誌等で、取り組んできた内容をも参考に、まとめたものです。すり傷をしたら消毒薬で消毒してガーゼをあてる、突き指をしたらまず指を引っ張る、鼻血が出たらティッシュを鼻の穴に詰める、プールで泳いだ後は水で目をよく洗う。いつもやっていることは、本当に適切な処置法なのでしょうか?。医学は、この数十年でめまぐるしい発展を遂げてきています。その間に、今まで当たり前のように考えられてきた医学の常識がまったく根拠のない迷信だったり、単なる思い込みだったりと、驚愕する事実がわかってきました。本書では、今まで信じられてきた医学常識を覆し、94項目のあやふやな医学常識を俎上に上げ、その可否を詳しく説明します。